【聽寫練習】ハゲタカ #2 - 資本の論理

<禿鷹>第二集

鷲津與芝野

芝野:鷲津
   サンデーをどうするつもりだ

鷲津:我々は投資ファンドです
   投資した以上利益を産んでもらわないと

芝野:同じ目を遭わせるつもりか
   西乃屋旅館と

鷲津:そういう芝野さんはどうするつもりですか

芝野:我々はメーンバンクだ
   もちろんサンデーを立て直す

鷲津:立て直す
   銀行は金を貸すことしか知らないって
   いつもおっしゃてましたよね
   先輩
   楽しみです
   しがらみいっぱいの日本の銀行が何をできるのか
   失礼します

芝野:鷲津

芝野:あれがお前のやり方か
   札束でひっぱたいて
   人の誇りを踏みにじるのはお前のやり方か

鷲津:何の話です

芝野:そのやり方で本当に会社は
   再生すると思ってんのか

鷲津:だから何を言ってるんですか
   私の目的は金
   それだけです

芝野:西乃屋旅館もそういうことだったのか
   体のいいこと言いながら
   結局会社を安く買って高く売る
   それだけだったのか

鷲津:そうです
   それが?

芝野:それがだと?
   人が一人死んでるんだぞ
   なのにそれがだと?

鷲津:あなたが言ったんじゃないですか
   七年前のあの日
   私が貸し渋りをして
   三島製作所の社長を追い詰めて
   社長は自殺をした
   泣いてる私に
   あなたが言ったんじゃないですか
   しょうがないだろう
   日本は資本主義なんだからって

芝野:なんとも
   やりきれないな

芝野:あんまり自分を責めるな
   会社のためにやったことなんだ

芝野:借りたものは返してもらわないと
   うちだって危ないんだ

芝野:酷な言い方だが
   借りたものは返してもらうし
   金がなければ
   倒産するしかない

芝野:突き詰めれば
   それが資本の論理だ

芝野:お前が悪いんじゃない

鷲津:あなたが言った資本の論理ってなんですか
   きれいごと言っても
   金がなくちゃ何も始まらないってことでしょう
   そんな当たり前のことに
   ようやく気付き始めたんですよ
   この国も

鷲津:あの工場は
   自動車メーカの下請けの下請けの下請け
   部品を固定する特殊なねじを作っていました
   ねじ一個の加工賃は七円五十銭
   二人で二千個
   それは八時間で作っていた
   時給いくらです?
   朝から晩まで
   油まみれて働いても
   その自動車メーカの車は買えないんですよ

鷲津:親会社に無理を言われて
   工作機械を買うのに二百万もの金を借りて
   その二百万が返せずに首を吊りました

鷲津:私はあの時
   何とか親父さんを救おうとした
   貸し渋りを命じた銀行を恨みました
   けど銀行は当たり前のことをしたんです

鷲津:二百万
   たった二百万の金が返せなかった
   親父さんが弱かっただけだ

鷲津:それが世の中です
   きれいも汚いもない
   善意も悪意もない
   二百万の金さえあれば
   親父さんは死なずに済んだ

鷲津:そのことに気付かない私は愚かだったんだ
   私はアメリカに渡り
   徹底的に学びましたよ
   芝野さんの資本の論理ってものを
   金を持ってるものだけが正義だってことを

鷲津:私を変えてくれたのは
   あなたですよ
   芝野さん

鷲津:サンデーは金のなる木です
   必ずうまい具合に料理させていただきます
   西乃屋旅館と同じようにね
   失礼します

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